質問 色覚の治療は出来ますか?

回答 この質問はとても多くの色弱の方、あるいは色弱のお子さんを持つお母様からいただきます。そんなときに私どもは、とても慎重にお答えしなければならないと威儀を正します。そもそも治療というのは異常な状態のものを正常な状態に戻すことを言います。色覚異常とか、色覚障害という言葉の裏には、色弱は劣っているという考え方が潜んでいます。

実は、色覚とは遺伝的な多様性があるものであり、正常、異常という論議に無理があったのではないでしょうか? 例えば日本ではA型の血液型が多くAB型が約10%ですが、A型が正常でAB型を異常とは言わないのと同様に考えていただきたいのです。

カラーユニバーサルデザインを推し進める上で問題となっているのは、色覚が多様であることが知識として社会全体に行き渡っていないことです。そして、色覚多数型集団(C型)の人たちが得意な色づかいで、またC型の人たちだけに通じる色の名前でこの社会が組み立てられてきたことです。

物事を反対側の面から科学的に冷静に見れば色覚の障碍は個人に属しているものではなく、社会の方に属していると言えるのです。つまり、色弱の治療方法は社会全体をカラーユニバーサルデザインにすることだと言えるのではないでしょうか?


最新の遺伝的な研究では「少数色覚はヒトが群れとして生き残るための遺伝子の戦略である」という表現が見られます。つまり色弱は必要があって今まで淘汰されずに遺伝子として生き残ってきたのです。

私たちは、色弱者のみならず、すべての人の未来のための社会創りに少しでも貢献していきたいと思っています。